真夏のお仕事


数週間前から起こっていた連続通り魔事件。
死者は出なかったものの
13人もの重軽傷者を出した事件の犯人が、
今朝自首した。

「わかんないもんだね」
上司が言う。
「なんで急に自首なんて」
俺は黙って肩をすくめた。
泣きながら電話で自分がやったのだと言われた。
「名乗り出ないと呪われる、か」
上司が呟く。
「自分が怪我させた相手の夢でも見たんじゃないですか?」
「かもな」
今はそいつのマンションを家宅捜索中。
出るわ出るわ。
犯行に使ったと思しき、
ハンマーが血のついたままで、
犯人がつけていた仮面も。
「クロ、ですね」
「だな」

最近、何故だかこんな事件が多い。
迷宮入りするかと思われた事件の犯人が突然自首してくる。
言うことは同じ“呪われる”
どうなっているやら。
「世も末だねぇ」
上司のぽつりと呟いた言葉に、俺も素直に一つ頷いた。


一度県警に戻ろうと外にでると、
制服警官と少年二人が言い争いをしていた。
言い争いというか、少年が勝手にまくしたてている。
「ああ、またあいつらか」
一緒にいた鑑識の四月一日のじぃさんが言った。
「知ってるんですか?」
尋ねてみると、
「ああ、よく現場にくるんだ。
探偵ごっこかなんかのつもりなんだろうけどな」
「へぇ」
言われてみると、確かに二人は制服警官につまみだされたみたいだ。
「部長、もうやめましょう、帰りましょう」
背の低い方が高い方へそう言っている。
高校生ぐらいなのに、探偵ごっこねぇ。
幼稚な遊びをしたもんだ。
「この暑いのにご苦労なこって」
「まったくだなぁ」
俺の言葉に四月一日のじぃさんが頷いた。
「まぁ、夏休みだからこうやって顔を出せるんだろうよ。
休みが明けたらまた姿を消すさ」


「笹倉、戻るぞ」
既にパトカーに乗りこんだ上司の言葉に、
「あ、はい」
二人から慌てて視線を逸らし、そちらに駆け寄った。

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