真夏のお仕事ごっこ


アタシはその日、
生徒会の仕事で他の高校まで書類を届けなければならなくて、
このくそ暑いのにふざけるなとは思ったけれども、
それでもやっぱりアタシが生徒会長である以上、
それは避けられないことで、
しょうがないから、暑いなァと思いながら町を歩いていた。
MDをカシャカシャ鳴らしながら歩いていると途中で人だかりを発見した。
パトカーまでもとまっていて、これは何かの事件だろう。
ちょっと早足で近づいたら、
「おい、さっさとガキはかえったっ!」
そんな言葉が聞こえて、アタシはそちらをみた。
制服をきたお巡りさんにつまみ出されている二人の男の子。
アタシは少し眩暈がした。
だって、よぉくしっている子たちだったんだもの。
「……志田君」
思わず小さく呟く。
探偵同好会の部長であるところの彼はわいわいまだ刑事につかかっていった。
大方また、探偵ゴッコをしているのだろう。
彼の後ろでは、彼が特に可愛がっている探偵同好会の高坂君が
必死に暴走する志田君をとめようとしている。
どうしよう。
一瞬、このまま他人のふりをして立ち去ろうという考えが頭に浮かんだけれども、
彼がこうやって暴走することでこれ以上アタシの学校に傷をつけられても困る。
そう考えると、ため息をつきながらアタシは早足で彼らに近寄り、
げしっ、
何の躊躇いもなく志田君の後頭部にけりを喰らわせた。
「生徒会長……」
高坂君がなんともいえない表情でアタシを見てきた。
「お騒がせしました」
そんな高坂君も、アタシの足の下で低くうめいている志田君も無視して
アタシは刑事に笑いかけた。
「コレはアタシの学校の生徒なんで、こちらできちんと始末します。
ご迷惑をおかけしました」
そのまま刑事の返事を待たずに、志田君を引きずって歩き出す。
周りの野次馬を一睨み、
高坂君が、慌ててついてきた。


志田君相手に、アタシの学校の品位を下げるなと文句を言ったあと、
本来の目的のためにアタシは再び歩き出した。
まったく、暑いのに余計な動きをしたから更に汗をかいてしまった。
ああ、メイク落ちてないといいけど。
電車に乗ると少し涼しかった。
どうして、他県の高校にまで書類をわざわざ出向いて届けなければならないのか、
そんなことを思ったときもあるけれども、
それもこれも、アタシの学校の評判をあげるためなのだと思えば、
何ら苦ではない。
相手先の高校につくと、受付に笑いかけながら持ってきていた書類を渡す。
ああ、暑い。
アタシの学校は私立だから忘れていたけれども、
公立高校には大抵クーラーなんてついていなくて、ああ暑い。
この学校の生徒はよくこんな環境で勉強できるなぁと思う。
ああ、だからこの学校の偏差値は低いのか。

あまりの暑さに耐え切れなくて、
どこかでお茶でも飲もうかと思っていたら、
目の前に喫茶店を発見した。
高校の目の前という特異な位置にあるその喫茶店にはいると、
とりあえずアイスコーヒーを頼み、
頬杖をついてそれがでてくるのをまった。
夏休みなのにまばらに客はいて、でも全部高校生らしかった。
特にカウンターに座った女の子がマスター相手に語っている。
「お待たせしました」
出されたアイスコーヒーを消費しながら、
この暑さの中帰るのもだるいよなぁと思っていた。
アイスコーヒーの値段は280円。
なかなか良心的な値段だなァとこの店の名前
「Indian summer」と入った伝票を見ながら思った。

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