珈琲論


お湯を細く、粉の真中部分よりゆっくりと
「の」の字を書くように落としていく。
粉がまんじゅううのようにふくらむのを確認すると、
30秒ほど蒸らす。
この瞬間が至福のときだ。
粉の表面の泡が落ち始めたら、次のお湯を注ぎ始める。
2回目、3回目とお湯の量を多くしていき、
ジャスト4回目で終わらせることが出来た。
最高だ。
珈琲の香りが広がり、
それがはいったことを確認すると、
神崎颯太は満足そうに笑った。

神崎颯太は珈琲マニアである。
珈琲狂だと言い換えても差し支えない。
食べなくても生きてける不死者ではあるが、
だからこそ、珈琲に執着するのかもしれない。
いつから好きなのか、覚えていない。
少なくとも、人間だったときはそんな余裕はなかったから、
不死者になってからだろうが。
珈琲を飲む瞬間、生きていてよかったと、彼は思うのだ。

やはり自分で淹れるのが一番美味しい。
自画自賛かもしれないが彼は常にそう感じていた。
以前行った喫茶店で、豆の種類などを問い掛けたが
明確な答えが返ってこなくて失望した。
高校の前にあるような、子どもを相手にした喫茶店なのだから
しょうがないといえばしょがないが。
特に、チェーン店は駄目だ。
同じ質問をしたら、
「……さぁ?業務用のなんですけど」とか冴えない男が答えた。
駄目駄目だ。
尤も論外のなのはインスタント。
香りがないじゃないか、香りが。
彼の同族で一人、
「簡単だから」という理由だけでインスタントを愛用するやつがいるが、
何を考えているのか。
段階を多く踏むことは一見大変そうに見えるが、
だからこそ得られるものも大きいというものだ。
だから、あいつはいつまで経っても青二才なのだ。子どもなのだ。

珈琲は美容や健康にも役立つ。
消化促進や二日酔い、脂肪の燃焼とか。
まぁ、不死者である彼にはさして関係はないが。

そんなことを思いながら、今日も、
神崎颯太は至福のティータイムを送るのだった。

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