紅茶論


紅茶を淹れる際、最も倖せを感じるのは、
あのお湯を注いでから葉が開いていくの見ているときだと思う。
気付かないといけないから、という理由で
大抵の場合電子式のタイマーを使うことを推奨されているし、
仕事場ではそちらを使っているけれども、
家で時間があるときは砂時計を使う方が好き。
砂が落ちていくのをゆっくりと眺めながら、
時々味を確かめて、好みの濃さに仕上がるのを待つ、
あの瞬間が一番好き。


だから、あまり外では紅茶を飲まない。
自分の好みではないから。
ファーストフードとかでティーバックを淹れてからお湯を注いだり、
会計を済ませているそのときに既にティーバックが入っていたりすると
少しばかり泣きそうになる。
そんな苦くなってしまうじゃない。


だから、今日も仕事が終わって事務所に戻る前に寄ったこの喫茶店で、
恥を偲んであたしは茶葉の種類を聞いた。
返ってきたのは、昔からある有名なティーバックで、
それならばと断ってマンゴージュースを飲むことにした。
あのメーカーの紅茶は好きではない。
なんだか美味しくない。
紅茶はやはり、自分で淹れるのに限る。


店内には、あたしの他に女性が一人とサラリーマンっぽい男性が二人。
店員も二人。
確か、この店は050801で依頼にあがていた店だ。
担当は円姉だから詳しいことはわからないけれども、
こうやってあたりを見る限りたいした問題はなさそうだ。

――。
「いらっしゃいませ」
新しい客がまた一人入ってきた。
こうやって人間観察をすること、実は嫌いではない。
その新しい人は、
先ほどからいた女性を見つけると迷わずにそちらによっていった。
待ち合わせなのかしら?
友人という間柄ではなんだかなさそう。


やっぱり、ジュースなんかよりも紅茶が飲みたい。
この甘い味に閉口して、それでも全部のみ終わるとあたしは食器を下げて店をでた。
「ありがとうございましたー」
報告書を出さなきゃいけないから、どちらにしろ事務所にはいかなきゃ。
ついでに紅茶を淹れよう。
新しく買った、パッションフルーツの香りのするお茶、あれがいい。
暑いからアイスにしようかなぁ。


そんなことを思いながら、あたしは真夏の太陽の下へ一歩踏み出した。

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