素行調査


14:57 M駅前で北山春香嬢(以下、K嬢)は
      男性(根岸正明氏、別紙参照。以下N氏)と合流する。
15:27 M区3丁目に所在する甘味処「大和撫子」に入店。
      店内での張り込みを開始する。
      K嬢とN氏は楽しそうに談笑する。



息子の恋人の素行調査。
結婚の約束をしたわけでもない、ただの恋人。
そんなやつの素行調査を依頼する親ばかな依頼人の姿を思い浮かべながら
軽くため息をついた。
「うちのたぁ坊は」
成人した息子を捕まえて人前でたぁ坊なんて呼ぶその神経にもあきれ返る。
ちなみに、この依頼はそのたぁ坊(21)には極秘なんだが。
ところてんをつっつきながらそんなことを考える。
尾行中は飲食は厳禁。
ああ、もったいないなぁ。と思ってちょっと食べたけど。
で、そのたぁ坊の彼女、K嬢(19)はN氏(妻帯者・39)とただいまデート中。
不倫というか、まぁぶっちゃけていうと援助交際だな。
その割には、N氏の奥さんが実家に帰ってから毎日会っているから
ちょっとは情が移っているのかもしれない。
まぁ、N氏、君もそろそろ年貢の納め時だよ。
ちらりと、二人のほかにいる、もう一人の男性客を見る。
N氏の奥さんが実家に帰ってから、N氏のことを尾行している人間。
気になって調べてみたら、同業者。
「スウリ探偵事務所」の雛梨法征(23)とか言ったか。
N氏の奥さんから依頼を受けたらしい。
かわいそうに。
奥さんが帰ってきたらどやされるんだろうなぁ、エィメン。

そんなことを思っていると、ちりん、人の客がはいってくる。
俺も人のこといえないけど男一人で甘味処って寂しいよな。
その男はにっこり笑いながら、店員に
「九州男児を」
と告げた。
……待て。
壁に貼られたそれの写真を見る。
九州男児ってあれじゃないか。
金魚鉢パフェならぬ、金魚鉢あんみつじゃないか。
甘党の男性が居ることも認めるが、それは無謀な挑戦ではないか?
K嬢、N氏並びに雛梨探偵も彼のことをじっと見ている。
そりゃぁ、気になるさな。
その男性客がこちらに視線をやると、俺も含めて全員が面白いように視線をそらした。
お近づきにはなりたくない。
仕事にさしさわりがないならば、なんでもいいんだが。
そして、男は恐ろしいまでのハイスピードでそれを平らげると出て行った。
時間にして僅か8分。
すみません、気持ち悪いんですけど。

そう思っていると、雛梨探偵が外にでていった。
コレは外で張るつもりかな?
ここの外の構造を思い出す。
あまり人通りのない道だし、待ち合わせを装うにも不自然か。
あの人が外にいるなら俺までも外にでて立っていたら怪しいしなぁ。
そんなことを思っていると、K嬢、N氏の二人が立ち上がった。

16:32 K嬢、N氏連れ立って甘味処を出る。

二人が外に出たのを確認し、少し待つ。
それから、席を立つ。
会計はあらかじめ済ませている。
「ごちそうさま」
「ありがとうございました」
店員(えび茶式部)の声を背に受けながら日差しのなかに飛び出した。
少し早足で大通りまででる。

16:33 K嬢、N氏西方向へ。
      尾行再開。


帽子をかぶり、二人のあとをつける。
二人は道路を渡り反対側へ。
様子を見ながら、俺は歩きつづける。
ここで慌てて反対側に渡ったら目立つし。
雛梨探偵は慌てて反対側へ渡った。
って、探偵歴浅いな、君。
と、思っていたら高校生ぐらいの少年が二人、
雛梨探偵の跡を追って慌てて道路を渡った。
まだいたのか。
軽く驚く。
甘味処に入る前から、雛梨探偵をつけてはいたが、まだ続けていたのか。
どうやら、探偵ごっこらしいが。
気付いていない雛梨探偵はある意味あっぱれだ。
そして、何よりも、こんなに大勢に(直接的であれ間接的であれ)
尾行されているのにきづかない、K嬢とN氏が凄い。

さてさて、仕事仕事。
素行調査なんて好きじゃないがしょうがない。
そう思いながら、意識を集中させた

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