メモリアル


「どうして貴方はいつもいつもいつもいつも!
そのような愚行を繰り返すのですか?
猿にだって学習能力はありますよ?
先日も、警察官の邪魔をしたと学校側に苦情がきていたそうです。
これ以上このようなことが続くのでしたら、」
「あー、うん、わかった、ごめん桜子さん今後は気をつけるから、
頼むから裁判にかけて廃部とかそういうのはやめて、ね」
「でしたら、もう少し自重してください」
「そうですよー、志田さん。
あんまり委員長を苛めないでください」
「付き合わされる僕の身にもなってください」
「太陽までっ!」
男女4人が道端でなにやら話している。
高校生ぐらいの彼らは、内容はともかくとしてなんだか楽しそうで、
若々しいなと感じた。
おそらくわたしの娘と同じぐらいだろう。
そう思うと、軽くため息をついた。
エミリも彼らのように友達と遊びに行くとかすればいいのに。
同年代の友達がいないわけではない。
高校こそ通っていないが(わたしは通うように説得したのだが)
中学のときの友人とは今でも連絡をとりあっているのに。
まったく、あの意固地な性格は誰に似たのか……。
……いや、わたしも妻も我は強いが。

妻と出会ったのは大学3年の夏で、研究所ではなく大学で出会った。
それを思ったらやはりエミリにも、
多少無理をしてでも学校は行かせるべきだったのではないかと思った。
わたしがいうのもおかしいがあんな研究所のあんな怪しい派遣執行官なんていう仕事、
いつなくなるかわからない。
人として真っ当な道とは言いがたい。
そもそも協調性や社交性を養うには丁度いいのではないか。
あの子は猪突猛進で自分が正しいと思ったことは決して譲らない。
おもちゃの剣をふりかざしていい気になっている子どもと同じだ。
……まぁ、先日のG016事件(わたしはこの名称は気に入っていない)の時、
神山さんと対峙したことから少し何かが変わったようだが。

そういえば、大学のサークルの後輩で、少し変わった子がいた、と思い出した。
何故か打ち上げなどの集まりに一回も出ない子だった。
周りがあまりいいことを言っていなかったのでそれとなく、
たまには出たらどうかと告げたら、
「駄目なんですよ」
と微笑んで言われた。
「先輩は、幽霊とか妖怪とかそういうもの信じますか?」
唐突にそう聞かれ、そのころから卒業後は派遣執行官だなぁと思っていたわたしは、
「全面的には否定しないよ」
と曖昧に言葉をにごしておいた。
「私の彼は、そういうのと同じなんですよ。
逆らってはいけないんです」
「……悩みがあるなら相談にのるけど?」
彼女の言葉に、所謂不良の暴力とかそういうものが思い浮かんで、
そう言ってみると、彼女は笑って首を横に振った。
「違いますよ。
妖怪とか幽霊とかそういうのと同じっていうのは、
この場合には肯定的な言葉なんです。
彼はそういう化け物みたいな人だから、
……例えば、神様が地上におりてきて、でも、
それがあまりにも神々しすぎて人間が怖がって近づかない、
そんな空気を持った人だから。
崇拝してくれる人はたくさんいるけれども、
ずっとそばに居てあげられる人はいないんです
だから、せめて私は、出来る限り彼を助けたいんですよ」
彼女の言っている意味はよくわからなかったが、
彼女はとても綺麗な笑顔を浮かべてそういうから深くは何もいえなかった。
その後も彼女は打ち上げなどには来なかったし、
そのままわたしも卒業してしまってどうなったかわからない。

実のところ、彼女がはいってきたばかりのころ、
彼女に少なからず恋心のようなものを抱いていたこともあった。
だから、思い出したのだろう。
彼女は今はどうしているのだろうか?

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